この日もプラハから離れて小旅行をするので、バス乗り場に近いAndel まで地下鉄で。そして、Hさんから教えてもらった、朝6時半(週末は7時半だったかな?)から開いている『Pivnice U Andela』へ向かう。Hさんと飲んだ翌日の夕方、場所を確認するために一度来てみたのだが、外から見ただけでも現地のおじさん達ががこれでもかと密集しており、とてもじゃないが”素人”の私などが入れる雰囲気ではなかった。まだ夜が明けてまもない7時半。出遅れたか・・・。でも、さすがに入ることはできるだろう。興奮からかやや小走りになる。
満席ではないものの、平日の朝7時半だというのに既に10人ほどの客がビールを飲み、またはビールをチェイサーに(?)薬草酒をあおっている。外観からは計り知れなかったのだが、入って観察すると店の広さや雰囲気は『Jelinkova』に似ている。伝統的なホスポダだが、『黄金の虎』のように観光客に知られている雰囲気は微塵もない。正しく、「地元民のための飲み屋」である。先日”下見”をしていたおかげで Gambrinus10° のタンクが29コルナというのはわかっており、30コルナを握りしめて店に入ったのだ。もちろん、長居をするつもりなど毛頭無い。ビールのサーバーを指さし、マスターに30コルナを手渡すと、マスターは特に私に関心を示すことも無く、縦長のグラスに一気にビールを注いでいく。もちろん、サイズなど聞かれるわけはない。チェコの伝統的なホスポダでは0.5リットルがデフォルトだ。
ビールを口にした瞬間、私は Gambrinus を真剣に飲んでこなかった自分を大いに恥じ、そして悔いる。Gambrinus と言えば、スーパーにおいて焼酎の「〇五郎」や日本酒の「□殺し」、はたまたウイスキーの「ブラック△ッカ」の如く大容量のペットボトルで販売されているため、酔っぱらうためのビールというイメージを勝手に持っていたのだ。誤解を恐れずに言えば、ビール旅に来てわざわざ飲むものではないと。しかし、どうであろう。このGambrinus の恐ろしいまでの美味さは。タンクビール特有の新鮮さとクリーミーなきめ細かい泡。キリっとしていて苦味もしっかり感じた後にどっしりとくる麦汁の濃厚な甘み。当然お代わりするよね。2杯をさくっと飲んでバス停へ。口の中にずっと麦汁の甘さが残っている。決してくどいということは無く、爽やかに。初めての『黄金の虎』で Urquell 飲んだ時、口の中に残るその爽やか苦味に感動したなあ。その時のことを強烈に思い出した。
さて、バスに乗っていたら、どうしてもトイレを我慢できなくなってしまい、知らない場所で途中下車。本数が多い路線だったので良かった。朝飲むと特にトイレが近くなるんだよね。今更ながら、チェコでビールを飲む際は、トイレ確保をイメージしておくことが重要なのだ。
バスを降りてから結構歩いて醸造所がある街へ。
やっとこさ着きました、『Pivovar Podlesi』。周りには店らしい店は無く、平日の昼時ということもあってランチのお客さんが続々と来店。作業着を着た方も皆、水を飲むように普通にビールを飲んでるね。平日の昼間かあ。まあ、チェコだからね。。。
10°のラガー。Minipivovar では久しぶりかな。甘味が少し強いが、苦味もあって大手かと思うほどのバランスの良さ。いいねえ。続けざまにオーダーした12°はかなり濃くてウイスキー感たっぷり。私はまだ、このウイスキーのような重厚感のあるラガーをこなしきれてないんだよね。いつかしっくりする日が来るんだろうか。
ラストのIPAはやはりチェコIPAの按配だが、グレープフルーツというよりみかん味。プラハにいるだけでも相当なバリエーションを楽しめると思うけど、せっかく一週間チェコに来たからには、何回かはこういう場所に来て、街の雰囲気を少しでも感じながらビールを飲むのが楽しい。おそらく、この Pivovar に来た日本人などほんの数人、もしかしたら初めてじゃないかとさえ思うが、何気なくビールを飲むことができるんだよなあ。
さて、夜はHさんとこの旅二度目の飲み。お忙しいところを1時間一本勝負(ちょっと超えたけど)ということで時間を割いていただいたのだ。しかも、以前Hさんが住んでいた場所にほど近く、行きつけにしていたお店。いやあ、この外観は一人だったらまず入らないなあ。この辺りの地名が鐘(?)に関係あるらしく、サーバーにはご覧の通りの。
ビールの写真を撮るのをすっかり忘れていて、帰り際に一枚。ビールは当然(?)Gambrinus。ここも10°のタンクを提供する店で、これがまた美味い!!『Pivnice U Andela』のGambrinusは温度が低く、ガスが比較的強めでキリっとしているんだけど、ここのは『Pivnice U Andela』より気持ち温度が高く、ガスがかなり抜かれたサービングで、より麦汁の甘味をしっかり感じる按配なのだ。短い時間で3杯飲んだのだが、時間さえあれば10杯いけるんではないか。そんなドリンカブルで素晴らしいビールを飲ませてくれたHさんに本当に感謝。
そんな Gambrinus 談義に花を咲かせる中でも、Hさんから色々な店を教えてもらって。その中から本日4軒目に選んだのがAndel にある「Radegastovna」。そう、あのチェコのスーパーでも良く見かける『Radegast』をドラフトで提供するホスポダなのだ。オリジナルの10°から無濾過、12°のタンクまで。しかも、泡ビールの「Mliko」もできるんだあ。
酔っぱらっていたのか、無濾過を2杯さくっと飲んで終了。今思えば、何で12°のタンク飲まなかったんだろう。せっかくの初ドラフト Radegast だったのにい。後悔・・・。それにしてもかなり”くせ”のあるビールだなあ。薬草っぽいとでも言うのだろうか、独特過ぎる。このビール、一般受けするのだろうか。
さすがに飲みすぎたかな。でも、Hさんのおかげで Gambrinus を目いっぱい堪能し、とても幸せな気分。Gambrinus は、世界でビールを一番飲むチェコ人が日常で最も飲むビールの一つ。今回、その Gambrinus を最高に美味しく飲ませる店を一日に2件も訪問できたんだよなあ。「チェコビール巡り」を謳ってこれまでプラハを中心にチェコを周ってきたけど、今日の Gambrinus をもってとりあえず一区切りついたかと。もちろん、「ビール巡り」に終わりはない。だけど、どこかすっきりしたのも事実なのだ。